WACK WACK通信VOL.59 カMiヤマ
フリーター
今日街を歩いてると、そこにはおよそ2ヶ月ぶりの日常があった。それはもはや非日常に感じるほどの違和感と不安。しかしそれが日常であるという懐かしさや安心感も確かに存在していた。そんな日常であり非日常である駅までの道のりの人混み、その中の一つに公園でサッカーボールを蹴り合う父子の姿があった。ワイヤレスのイヤホンから音楽が伝わるため彼らの会話は微塵も聞こえない。しかしそこには自分もかつて経験した日曜の昼の親子の時間があった。今までなら子供の方を見て、『楽しそうだな』だとか、『あの頃に戻りたいな』だとか漠然と考えていた自分だが、今日はふと父親の方に目が行った。その父親を見ていた時間はおよそ15秒ほど(実際はもっと短かったかも知れない)なので、ここからは全てが自分の妄想でしかないのだが、私はこう考えた。
6月に入り今までの生活が取り戻されつつあり、会社にも通常通り出勤することになった。久しぶりに集5の通常の勤務を終え、疲れたその体だが、家に帰れば子供との時間を大切にする父親としてのスーツを着なおす。これから梅雨が来るとは考えづらいほどの暑さと日差しの6月の第一日曜日、運動不足の子供の相手は自分の役目。疲れをなるべく悟られないよう、本当は子供に夢中だが、あたかもサッカーに夢中であるかのように演じながらボールを蹴る。
そんな彼の姿(全て妄想)を見た時に一つ考えた。自分は今大学三年。しかし大学の授業は全てリモート。学校に行くこともない。部活もない。日々課される課題に文句をつけるだけの生活。唯一のタスクは週3回、1日8時間ののアルバイト。これがとてつもなくだるい。1日休んで働いて、2日休んで働いて1日休んで働いて の繰り返し、この生活ルーティンにそろそろうんざりしてきた頃だった。
まてよ?私は考える。今までの日常であれば学校は平日週5回、部活がある日は帰りは22時。それ以外の日でアルバイトに励む。これが大学生の最も一般的な生活スケジュール。今の私どうだ?週3回のアルバイト。それが唯一の予定。なのにそれに疲れてきている。どーせ秋からは授業も再開されるかも知れない。もしかしたら夏から部活動が始まるかも。そう考えると大学生の自分に突如現れたこの非日常。非日常が日常となりつつある自分にこそ危機感を抱くべきでは?週4日も休んでていのか??
今目の前の父親は週5で働き残り2日は家族の時間に当てている。自分1人で心休まる時間はないのかも知れない。対して私は週4日は1人心休まりまくっている。大人というものに片足を踏み込んでいる以上、子供のような生活はもうできない。少なくともあと2年で一般社会に出ることになる私としては、父親のような生活をするのが普通なのではないか、週3のシフトを嘆くのではなく、週5回働いて残り2日をもっと大切にするべきではないのか?9万円という給与に喜ぶのではなくもっとたかみの、15万、20万の喜びを得るべきではないのか?そう考えると止まらない。私は無計画に考えられる最高の結末を予想する癖があるため、週五回働いた時の月収の計算を始める。それだけで心は踊る。ひどく晴れた今日が、さらに晴れているように感じられた。
計算を始め目の前も明るくなり、音楽もより一層軽快に聞こえてきたまさにその瞬間。今の同僚であり、週五回働いているYさん(28歳)、Mさん(30歳)、Oさん(21歳)、Sさん(年齢不詳) (いずれもフリーター) の顔が頭をよぎった。そして最後には自分が今最も避けている謎のフリーターの長である年齢不詳のオネェ系のおっさんの僕を呼ぶ声が音楽を遮って脳内再生された。
明日は月曜日。
出勤日であり二週間後のシフトの提出日。
私は先週と同じように、月曜。木曜。土曜の欄に◯を書くことを心に誓った。
僕はただ、いつまでも無邪気にサッカーボールを蹴っていたい。
そう、思ったんだんよね。
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